AOT原作沿い3-11

 

 

 

ユーリ、アルミン! ハンジを任せた!!」

「了解!」

 

そう見送りはしたが、内心は不安があった。ケニー・アッカーマン。リヴァイを育てた人物であり、彼と同等あるいはそれ以上の能力を持つという。アッカーマンという姓が何を意味するのかわからないが、ミカサ、リヴァイ、そしてケニーを見る限り、特別な力を秘めた血筋なのだろう。

彼が負けるなど、想像はし難い。だが、この世に絶対など存在しない。

リヴァイが、もし――

 

「姉さん、兵長なら大丈夫だよ。姉さんのほうがよく知ってるだろ?」

肩を支えたハンジごしにアルミンを見れば、思ったよりも強い目をしてこちらを見ている弟の姿があった。

 

「……うん」

眉を下げて笑う。弟も、強くなった。

首を振って、嫌な想像を振り払う。今はハンジを連れて外へ出て、手当てをしなければ。

 

教会を出た時、大きな地響きが鳴った。地面が割れていく。

「っ! 早く離れよう!」

「うん!」

 

なぜ、地割れなど。地下はどうなっている。地盤が崩れたのなら、その下がどうなるか――

足を取られそうになりながらも安全と思われる場所まで移動すると、地面が陥没し――巨人が、現れた。

超大型巨人よりも大きい。自重を支えることもできず、全身を地面にこすりつけるようにしながら身体を動かしている。あれに狙われては、逃げ切れない。

血の気が引くが、それは、自分たちの存在など気が付かないかのように進みだした。南西――オルブド区の方向だ。

 

「なに、あれ……」

「僕らに興味を示さない…」

「……わから、ないけど、まずはハンジさんの手当てをしよう。馬をおいたところも幸い無事みたい」

ハンジを横たわらせ、手当てをアルミンに頼む。馬の頭数を確認してから穴のあたりを確認しに向かった。

 

不安にバクバクと心臓が音を立て、息が上がる。

教会は崩れ落ちてしまったからダメだ。陥没した地面では土砂が落ちている。では、リヴァイたちは。落盤から逃れられたのか、そんな術などあるのか、逃れられたとして、地表に出てくることなどできるのか。

 

「リヴァイさん…」

エレンも、ミカサも、他のみんなも、どこに。

どうやって探したらいいのかもよくわからないまま、陥没の周囲を駆けた。

 

「……コニー?」

求めた仲間のうちのひとり。彼は目に涙を浮かべて、顔を輝かせた。

 

「! ユーリさん!! 良かった、外だ!!」

「みんな無事…?」

「無事です、エレンも、みんな! サシャ、外に出られるぞ!」

「やったぁ~~~」

喜ぶサシャが「兵長~~」と言いながら下りていく。

 

「ッ…」

「えっユーリさん!?」

その深い縦穴を、ユーリも下りた。

 

「出口を確保しましたぁー」

「よくやった」

リヴァイの声だ。生きてる。生きている。喋れる。

 

「っ…リヴァイさん…!!」

「ッユーリ!?」

ワイヤーを使って下ってはいたが、かなりの勢いでリヴァイの胸へと突っ込んだ。そのまま地面に倒れ込んだリヴァイの身体にぎゅうっと抱きつく。小柄だけれど逞しくて温かくて、世界で一番安心できる場所。

 

「良かった…生きてて……地面が割れたときは…埋まって、しまったかと…怖くて…っ」

「だからってこんな高い穴を落ちてくる奴があるか、バカ」

「一番上から落ちてたら、今頃リヴァイさんはぺちゃんこです…」

嘆息しながら抱きしめ返し、頭を撫でてくれる、その温もりが愛しい。

 

「っ、ぅ…」

「……まだ、泣くな。全部片付いたらちゃんと褒めてやる」

そう言って瞼にキスをされる。そのまま身体を預けてしまいたくなるけれど、今はまだダメだ。なにせ任務は終わっていなくて、外ではよくわからないくらいに大きな巨人が這いずっている。エレンの無事も――

そこまで考えて、ユーリは身体を固くした。

 

「あ、れ」

「帰ったらまた押し倒せ」

 

「……、……! ッ!!!」

ガバリと起き上がると、呆れた、あるいは好奇の視線を向ける104期生たちと目が合う。

 

「ぅ、ぁ…ご、め、なさ…こんな、ときに…!!」

沸騰しそうなくらいに顔が熱くなる。場も状況も弁えずに、なんてことを。先程までと違った意味で涙が浮かんでくる。

 

「わたっ、わたしっ、先に上に戻って…あああそうだ凄い大きな巨人が地面を這って南に…! 放ってはおけなくて、でも体温が高いみたいで近づくことも難しそうだし、私とアルミンでは止め「落ち着け」はいっ!」

ぽんと頭に手を置かれる。

 

「先に戻って逆上せた頭冷やしておけ。…すぐに行く」

「はい…!!」

がくがくと頷いて、104期生たちの方を見ないようにしながら、地表へと戻っていく。

勢いよく穴から飛び出ると、驚いた表情のアルミンと目が合った。

 

「わっ! 姉さん、なんでわざわざ穴に入ったの?」

「……な、なんとなく…」

「ぇえ?」